主権者教育
シティズンシップ教育
開かれた十分な議論は 健全な民主主義にとって不可欠である
この名言は、1998 年に公表されたイギリスのシティズンシップ諮問委員会(以下「委員会」)の最終報告書『シティズンシップ教育と学校における民主主義の教授』に出てくる一節です。 この報告書は、かねてより政治教育や市民教育の必要性を説いてきたイギリスを代表する政治学者で、委員会の議長を務めたバーナード・クリックにちなんで、「クリック・レポート」と呼ばれています。また、この報告書を受けて、2002 年からイギリスでは12 ~ 16 歳までの中等教育において「シティズンシップ」という教科が必修化されました。 ところで、今日の社会的、政治的課題には、対立する複数の立場が存在するものも少なくありません。そのため、学校における市民・政治教育の場でこうした問題を扱うことには、教えられる内容が偏り、特定の考え方を生徒に植え付けることになるのではないか、との懸念がつきまといます。 こうした懸念に対してクリック・レポートは、その可能性を十分認識しつつも、民主主義にとって議論や論争は重要な要素であり、意見対立のある問題を市民教育から排除すべきではないとの立場をとります。そして、こうした問題をさまざまな角度から学ぶことを通じて、他者の考え方を理解し、理性的に考え、自分自身で判断し行動する力を養うことを提唱しました。 日本の公民科教育は、しばしば政治や法律などの仕組みを学ぶことに重点が置かれているとも言われますが、「賢い」未来の有権者を育てていくためには、クリック・レポートが示したような学校における市民教育、政治教育のあり方にも、目を向けてみる価値があるのではないでしょうか。 (Voters No.7号「名言の舞台」より)
2011年12月、総務省が発表した「常時啓発事業あり方等研究会」最終報告書は、
「欧米においては、コミュニティ機能の低下、政治的無関心の増加、投票率の低下、若者の問題行動の増加等、我が国と同様の問題を背景に1990年代から、シティズンシップ教育が注目されるようになった。それは、社会の構成員としての市民が備えるべき市民性を育成するために行われる教育であり、集団への所属意識、権利の享受や責任・義務の履行、公的な事柄への関心や関与などを開発し、社会参加に必要な知識、技能、価値観を習得させる教育である。その中心をなすのは、市民と政治との関わりであり、本研究会は、それを「主権者教育」と呼ぶことにする。
常時啓発は、子どもから高齢者まであらゆる世代を通じて、社会に参加し、自ら考え、自ら判断する自立した主権者をつくることを目指して、新たなステージ「主権者教育」へ向かわなければならない。」とし、主権者教育を、シティズンシップ教育の中心をなすものと位置づけました。
このページではシティズンシップ教育に関する資料や文献をご覧いただき、シティズンシップ教育への理解を深めてもらうことを目的としています。
タイトル等 | 執筆者等 |
シティズンシップ教育と学校における民主主義の教授 | シティズンシップ諮問委員会 |
シティズンシップ教育の意義と課題 | 小玉 重夫(私たちの広場291号) |
アメリカの有権者教育 | 横江 公美(私たちの広場283-287号) |
ドイツの政治教育 | 近藤 孝弘(私たちの広場289-293号) |
イギリスのシティズンシップ教育 | 新井 浅浩(私たちの広場294-299号) |
フランスのシティズンシップ教育 | 山田 真紀(私たちの広場300-304号) |
スウェーデンのシティズンシップ教育 | 宮本 みち子(私たちの広場306-311号) |
フィンランドのシティズンシップ教育 | 橋本 康弘ほか(私たちの広場312-317号) |
韓国のシティズンシップ教育 | 高 選圭(Voters 2~6号) |
オーストラリアのシティズンシップ教育 | 見世 千賀子(Voters 8~12号) |
オランダのシティズンシップ教育 | リヒテルズ直子(Voters 14~20号) |
スウェーデンの学習サークル | 太田 美幸(Voters 21~23号) |
社会・総合的な学習の時間用 副教材「小さな市民の 大きな力」(2012年改訂版) | 沖縄県選挙管理委員会 |
シティズンシップ教育と経済社会での人々の活躍についての研究会報告書 | 経済産業省 |
シティズンシップ教育と経済社会での人々の活躍についての研究会報告書別冊 | 経済産業省 |